アルママタレーシング、快進撃の第2章!茨城ラウンド激闘記

  マツ耐 栃木ラウンドを総合6位・クラス3位という、予想以上の好成績で終えたアルママタレーシング。大戦果に高揚するチームメンバーたちの間ではしかし、新たなるプロジェクトに向けた話が飛び交っていました。

FF車の方が乗り慣れてるんだって?だったらウチのデミオ、乗る?』
『次は自分で出てみたい。デミオはATだから、ハードルが低い気がする』
『次戦は筑波が舞台だけど筑波走り込んでる人、いるじゃん』 

 1か月後、チームは関東モータースポーツのメッカ・筑波サーキットで開かれたマツ耐 茨城ラウンドに、新たなるマシン・デミオで参戦することとなります。

参戦断念の危機、新たな試み、見えた栄冠、衝撃の展開、そして迎えた結末……
アルママタレーシング、第2の物語が始まります。


参戦決定まで:

 話は栃木ラウンドのさらに前、20254月某日まで遡ります。

 この日、都内のイタリアンレストランで開かれたアルママタレーシングの決起集会。その席上でチーム代表の臼井は、レース活動の大先輩である奥津からある話をされます。

「レースに使ってたデミオがウチにあるんだよね。ただし、車検はもう何年も前に切れちゃってる」

 ナンバー付き車両で争われるマツ耐、参戦には当然車検が必須となります。デミオでの参戦には車検の再取得・そのためのメンテナンスという高いハードルが待ち構えており、栃木ラウンドに間に合わせるのは至難の業。デミオでの参戦計画は一旦保留となります。

 そんな中で迎えた栃木ラウンドで交わされたのが、本文冒頭での会話。

 栃木ラウンドでレースデビューを果たした井上、同ラウンドではメカニックとして参戦していた高橋、筑波をホームコースとする荒井、そしてマシンオーナーの奥津。この4名のドライバーによるデミオでの参戦が、急遽決定されたのです。


車両整備:

 かくして決まったデミオでの参戦ですが、まずは最大のハードルである車検取得をせねばなりません。ここでチームは、東京都市大付属中高自動車部での繋がりを活かすことを思いつきます。

チーム代表の臼井は、自動車部で先輩だった安藤へ連絡を入れます。安藤は自らのショップであるGarage Aを運営しており、ダートトライアル競技用の車両製作のみならず、自らもドライバーとして参戦するほど。そのノウハウを頼り、デミオを託すこととしたのです。

この試みは大成功でした。長年の放置にもかかわらず、Garage Aでメンテナンスを受けたデミオはあっさりと車検に合格。最大のハードルを迅速に乗り越えてしまったのです。さらにここで、ドライブシャフトブーツの破れというトラブルまで早期発見されることとなります。もしもこのトラブルが見過ごされていれば、チームはレース当日に出走不許可の憂き目に遭っていたかもしれません。

車検を取得したデミオはオーナーの奥津のもとへ戻され、レースに向けたメンテナンスをチームメンバーが行うこととなりました。しかしここで、チームにとっての最大の危機が訪れたのです。

 ブレーキ系のメンテナンスとして、ブレーキフルードの交換を行っていた時のこと。フルードを抜き取るためのブリーダーボルトがなめてしまい、緩めることができなくなってしまったのです。さらに悪いことは重なり、ブーツ破れを受けて手配していた代わりのドライブシャフトが、なんとデミオに付かない別車種の部品であることが発覚しました。

 この危機に際し、まずブリーダーボルトについては荒井が自前の工具でなんとか緩めることに成功。ドライブシャフトについても、練習走行の直前に正規の物が到着。滑り込みでなんとかデミオの準備が完了しました。 


練習走行①:2025717

 かくして、参戦準備の整ったデミオ。レース前のテストとして、筑波サーキットのライセンスを持つ荒井がマシンを筑波に持ち込みます。

 テストの目的は2つ。デミオのチェック走行と、燃費のデータ取り。

 何故、燃費のデータが必要となるのか?それは、途中給油が禁止され満タン1回分の燃料だけで走り切らねばならないマツ耐においては、低燃費と速いタイムを高次元で両立する走りが求められるためです。チームは事前に過去大会の記録から、クラス優勝に必要な燃費とタイムを計算。それを達成できるかが、このテストの成否を決めます。

 そして本テストにおいては新たな取り組みとして、現役生とのコラボレーションを実施しました。自宅にいる現役生と走行中の荒井が、スマートフォンの会話アプリで交信。現役生は荒井から伝えられる燃費とタイムをリアルタイムで計算して荒井に伝達し、その情報を元に荒井が最適な走り方を模索する……という体制でテストに臨みました。

 途中、交信が途切れるトラブルはあったもののテストは順調に進み、目標としていた燃費とタイムを達成する方法を見つけ出すことに成功。大きな手ごたえを得ます。


練習走行②:2025720

 レース本番まで1週間。チームは再度のテスト走行のため、再び筑波サーキットを訪れました。今回ドライバーを務めるのは、前戦デビューしたばかりの井上。

メンバー間で事前にミーティングを行い、①井上の習熟 ②燃料計の誤差を計測 ③可能なら、目標のラップタイム・燃費を達成できる走り方を見つける と、具体的な目標を設定して当日を迎えました。

 サーキット到着後すぐ、まず下見として歩いてコースを一周。レース経験豊富な奥津が、速く・効率よくクルマを走らせる術を井上へレクチャーしました。

 下見も終わったところで、いよいよコースイン。井上は予想以上の早さでクルマとコースに慣れていき、3回ある走行の1回目から目標タイムと燃費をクリア。2回目、3回目の走行ではさらに高い次元でタイム・燃費を両立させます。

 併せて、走行の合間には実際の燃料消費量と燃料計の示す値とを比較し、誤差を計測。これによりチームは正確な燃料消費量の把握と、緻密なレース戦略の立案が可能となりました。

 かくして、有益なデータと経験値を手にチームはサーキットを後にしました。 


レース本番:2025727

 レース当日、チームは筑波サーキットへと朝6時に現地入り。本番用タイヤへの交換と空気圧調整、データロガーの取付などの最終準備を進めます。

 掲げた目標は、何よりもまず「完走」すること。そのうえで、良い走りを重ねればクラス優勝さえ狙える。と、期待と想いを胸にチームは決戦に臨みます。

 

【予選】

 決勝のスターティンググリッドを決める予選は、午前1010分にスタート。まずは車両オーナーであり、もっともデミオを知り尽くす奥津がステアリングを握ります。1年以上のブランク、事前の練習走行なしのハンデを感じさせない走りで1’18.485のタイムをマーク、総合26番手・クラス4番手のタイムを記録します。

 予選中にドライバー交代を実施し、今回がレースデビューとなる高橋にステアリングを託します。高橋はこれがデミオでの初走行であり、彼に与えられた任務はとにかく「慣れる」こと。高橋はノートラブルで走り切り、これを無事に成し遂げてみせました。

 

【決勝】

 午後130分、いよいよ決勝スタートの時を迎えます。この日の茨城県は最高気温35℃と文字通りの猛暑であり、レギュレーションによりレース中のエアコン使用が義務付けられるほど。長く厳しい、2.5時間の決戦が今まさに始まります。

1スティント:荒井 巌

 スタートドライバーを務めるのは、筑波サーキットでのレース経験がメンバー中もっとも豊富な荒井。その経験値を活かし、スタートの混戦を巧みに切り抜けた荒井はなんとクラス2番手の好ポジションまでジャンプアップ。クラス2番手を確保した後は、燃費走行に切り替え燃料をセーブする柔軟な走りで第2ドライバーへステアリングを託します。

2スティント:井上 遼哉

 荒井からステアリングを託されたのは井上。事前テストの甲斐あって、安定したペースと燃費で周回を重ねます。途中、燃料計が故障し燃料消費量が一切分からなくなる、その上クラス3番手のライバルに迫られる、と危機的な状況に見舞われますが冷静に対処。ポジションを維持したまま、制限時間の50分ギリギリの長いスティントを走り切りました。

3スティント:高橋 昴誠

 第3スティントを任されたのは高橋、レース未経験の彼にとってはこれが初陣となります。しかしその初陣は、波乱に満ちたものとなりました。

 高橋はスティント序盤、筑波サーキットの名物・最終コーナーでスピンを喫してコースオフ。マシンはグラベルにタイヤを取られ、マーシャルの手で牽引されなんとかコースに復帰しました。

これにより大幅なタイムロスをしたものの、高橋は取り乱すことなくその後は冷静な走りを披露。アンカーへとマシンを託します。

4スティント:奥津 智貴

 アンカーの大役を務めるのは、メンバー中もっとも豊富なレース経験を持つ奥津。これまでの走行でタイヤは消耗しきってグリップ力は低下、燃料残量もレース残り時間を考えると心もとない、と厳しい状況にも関わらず巧みにマシンをコントロール。ペース低下を最小限にとどめます。

 しかし、スティント中盤でなんと燃料警告灯が点灯。ガス欠によるリタイアの危機が迫ります。ここで奥津は、このまま走り続ければリタイアは不可避だと判断。レース終了直前までピットで待機し、燃料を一切使わないことを決断します。

 この判断が功を奏し、無事89周目にチェッカーフラッグを受けました。

 最終リザルトとしては、総合28位・クラス5位。

 完走という最大の目標をチームは無事に達成しましたが、これは完走28台中の最下位であることもまた事実。

しかし一方で、急遽参戦が決まり準備期間も短いなか、社会人・大学生、ひいては現役生まで立場を問わず集ったメンバーが手間と頭脳と経験を結集し、一時クラス2位を走行するという「夢」を見せたのもまた、事実なのです。


次なる舞台、静岡ラウンドへの切符

 そして何より、今回の完走によってチームは、シーズン中最大のエントリー台数・観客動員数を誇る静岡ラウンドへの参戦権を手にしました。

高いポテンシャルを見せながらもそれを最終リザルトへ残すことのできなかった悔しさを胸に、チームは次なる戦いの場・静岡ラウンドへ視線を向けています。

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