アルママタレーシング、夢への第一歩! 雨と晴れの波乱万丈マツ耐もてぎレポート

 はじめに:母校の名を背負い、長年の夢が現実に


 

 我々の母校、東京都市大学付属中学高等学校には、現役生が活動する部活動の中にエコランレースに参戦する「中高自動車部」があります。その自動車部の卒業生以外にも多くの卒業生が自動車業界で活躍しています。そんな背景から「いつかは同窓会のレーシングチームを立ち上げたい」という想いは、我々同窓生有志の間で長年にわたり語られてきた夢でした。

 その夢が現実へと動き出したのは、一台の中古レース車両との出会いがきっかけでした。マツダ ロードスター NR-A。このマシンをチーム車両として迎え入れ、我々の挑戦の舞台として、初心者がレースの基本を学びながら参戦できる「マツダファン・エンデュランス(マツ耐)」を選びました。

 こうして、母校の名を冠した「アルママタレーシング」が、ついに産声を上げたのです。

準備:世代を超えた同窓生の絆が、マシンを仕上げる

 レース本番に向けて、NCロードスターの準備が始まりました。シート交換や6点式シートベルトの取り付けといった安全装備の装着から、ブレーキ周りのメンテナンス、油脂類の交換まで、作業はすべて同窓生たちの手で行われました。

 そこには、経験豊富な先輩が、未経験の大学生たちに工具の使い方から整備のノウハウまでを丁寧にレクチャーする姿がありました。単なるマシン準備に留まらない、世代を超えた技術と情熱の継承。この有意義な時間こそ、我々「アルママタレーシング」の原点です。

レース前日:2025年6月14日(土)

 決勝を翌日に控え、チームは決戦の地であるモビリティリゾートもてぎに前日入りしました。この日の最大の目的は、今回がレースデビューとなる井上遼哉に、決勝で戦えるペースを掴んでもらうこと。チーム一丸となってサポートする中、井上は練習走行で着実にラップタイムを縮め、目標としていたタイムをクリア。チーム全体が大きな手応えを感じました。ステッカー貼り付けや洗車、ブレーキやクラッチのエア抜きを行い、万全の体制で決勝日に臨みます。

レース当日:2025年6月15日(日)

 掲げた目標は「完走は絶対、そして狙えれば総合優勝」。仲間たちと仕上げたマシン、そしてドライバーたちの想いを乗せ、ゼッケンNo.64 アルママタレーシングロードスターはいよいよ決戦の日を迎えました。

【予選】午前の雨、チームプレーで掴んだ上位グリッド 

 午前9時、決勝のグリッドを決める予選がスタート。もてぎの空はあいにくの雨となり、滑りやすいウェットコンディションでの戦いとなりました。アタックは梅原拓臣と臼井達哉の2名が担当。まず梅原がコースインし、決勝を見据えてマシンの感触を確かめ、その情報を元にアタックを引き継いだ臼井が予選最終盤に 2'52.976 を記録。総合3位、クラス2位という、午後の決勝に向けて最高のポジションを獲得しました。

【決勝】ドライ路面での激闘!それぞれの役割を胸に刻んだ2.5時間 

 午前中の雨が嘘のように晴れ渡り、ドライコンディションへと回復した午後3時。予選総合3位という好位置から、いよいよ2.5時間の決勝レースの火蓋が切られました。我々アルママタレーシングは、梅原、高田、井上、そして臼井へとバトンを繋ぐ作戦で、激しい戦いに挑みます。

  • 第1スティント:梅原 拓臣 

 スタートドライバーは、現役スーパー耐久ドライバーでもある梅原が担当。スタート直後の混戦を冷静に抜け出すと、一時は総合2位のポジションをキープする盤石の走りを見せます。さらに、先の展開を見据えて走行中に燃費走行を研究。後続のドライバーのために「走り方」という貴重な情報を無線でチームに共有し、完璧な形で高田へとマシンを託しました。

  • 第2スティント:高田 耕嗣 

 ピットで梅原からバトンを受け取ったのは高田。このマシンに乗るのは今回が初めてという状況にも関わらず、セパン24時間耐久やJoy耐などで培った豊富な経験を活かし、すぐにマシンに順応。ペースを落とすことなく、安定したラップを刻み続けました。

  • 第3スティント:井上 遼哉 

 チームの3人目を託されたのは、今回が記念すべきレースデビューとなる井上。この日のために個人車両でのサーキットトレーニングやシミュレーターでの練習に励み、前日の練習走行で得た確かな手応えを胸に、自信を持って決勝に臨みました。交代直後は初のレースというプレッシャーからかペースを掴むのに苦労したものの、その後は見事に立て直し、無事に自分のスティントを走り終えました。

  • 最終スティント:臼井 達哉 

 アンカーは、もてぎでのレース経験が豊富な臼井。当初は終盤での追い上げを狙っていたが、ここでチームは想定外の状況に直面します。ガソリンの残量が厳しく、ペースを上げられない「燃費走行」を強いられることになったのです。攻めの走りから一転、燃費をいたわりながらもライバルを抑え込むという、経験と精神力が問われる我慢の走りへ。臼井は巧みなアクセルワークでマシンをコントロールし続け、見事ポジションをキープ。最終的に総合優勝車両と同一周回となる55周を走り抜き、チェッカーフラッグを受けました。


結果、そして次への誓い

 最終結果は、総合6位、クラス3位。

 「絶対完走」という第一目標は見事に達成しました。しかし、チームがもう一つ狙っていた「総合優勝」には届かず、また、クラス参戦台数の規定により、クラス3位という結果ながら表彰台に上がることはできませんでした。とはいえ初参戦ながら、総合44台中6位は大健闘です。

 この2.5時間の戦いは、コース上のドライバーだけで行われるものではありません。ピットでは、もう一つの戦いが繰り広げられていました。決められたピット作業時間を管理するメンバー、炎天下で確実かつ迅速なドライバー交代をサポートするメンバー、そしてチームの頭脳として燃費計算を行い、無線でドライバーに走行ペースの指示を送り続けたレースエンジニア。彼らピットクルー一人ひとりの完璧な仕事が、チームの55周完走を支える大きな力となりました。

 チェッカーを受けた瞬間の安堵、そして同時に湧き上がる悔しさ。それこそが、耐久レースが我々に与えてくれた最大の財産です。

今後の展望:卒業生から現役生へ、新たな挑戦

 この経験を糧に、アルママタレーシングは次なるステップへと進みます。今後は、母校の自動車部に所属する現役の中高生たちと共に、車両のカラーリングデザインや、レースで記録したデータ分析といった活動に一緒に取り組んでいきたいと考えています。卒業生と現役生が一体となり、技術と情熱を分かち合う。これこそが、我々のチームが目指す姿です。

最後に 

 マシンの準備に協力してくれた同窓生の仲間たち、サーキットで応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。長年の夢への挑戦は、まだ始まったばかりです。仲間に加わっていただける方、募集しております!

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